税金さえ払えば福祉の制度は受けられる

私は精神科医なので、精神障害者の患者さんをたくさん診てきました。

彼らがちゃんとした働き口につけないときや作業所で月に3万や4万円しか給料がもらえないような場合に、どうやって生活しているかと言えば、障害年金という年金を受給していて、それでも足りなければ生活保護も受けて暮らしています。

このように福祉の制度を利用している人はいっぱいいるのです。

それに、保証人がないとなかなか家が借りられない場合でも、生活保護を受けることによって家賃の滞納の心配がないという理由で、わりと家が借りやすくなる例がいくつもあります。何より医療費や介護費用がタダになるなど、非常に優遇されるのです。

だから私は、テレビで困窮している年金生活者を見ていて、この人たちが生活保護を受けられたらずっと暮らしも楽になるだろうし、「これまで苦しい思いをして税金を払ってきたけれど、この国は税金を払った分だけ元が取れるんだな」というふうに彼らも納得できるだろうと思うのです。

つまり日本国民は、税金さえきちんと払えば、最終的に年金だけで生活できなくなったときに生活保護を受ける権利を得られるんだ、と。

電卓、年金手帳、お金
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです

なぜかテレビでは生活保護の受給をすすめない

そんな当たり前のことを、弁護士のコメンテーターも出ているのに何も言わない。普段、正義の味方ぶっているコメンテーターも、生活保護のことについてはいっさい触れませんでした。

貧しい人たちに対する同情も共感もまったくない。年金生活者が物価高でこれだけ苦しんでいるのであれば、その人たちにどうやったら楽になるのかを教えてあげるのがテレビでしょう。それこそが、公共放送の責務ではないでしょうか。

たぶん、コメンテーターなる人たちも、「生活保護を受けられる」という事実は知っているのだけれど、「それを言うと生活保護の申請者が増えて大変なんですよ」とか、「国の財政が赤字になるから困るんですよ」などという圧力がかかっていて、忖度している可能性もあると私は思っています。

財務省というのは税金をむしり取るくせに、国民のために金を使うのが一番嫌な役所ですから。

しかし、日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定め、この権利を具体的に実現するためにつくられたのが生活保護制度です。先進国である以上、当たり前の制度なわけです。

自分の暮らしを守るために必要な制度は使おう

和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)
和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)

テレビが教えないので、私が教えて差し上げます。この制度を使えば、ちょっとは楽な暮らしができますし、月に1回ぐらいは美味しいものが食べられると思います。年金が少ない方は、積極的に生活保護の申請に行ってください。

ついでに言いますと、スマホを持参して、役場の対応をちゃんと録音しておいてください。「収入があると生活保護は受けられないんです」などと噓を言ったら、それを世間にバラすことができますから。

ぜひ、そういうふうにしてでも、自分の暮らしを守っていただきたいと思います。

(初公開日:2025年5月26日)

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