時間差でやってくる報酬もある
それは、努力の意味の中に目標から外れた報酬(副産物)を含むかどうかだ。この認識にズレがあるから会話が食い違う。
そして、もうひとつの観点がある。
彼女のインタビューを聞いて、「この努力は次のロサンゼルス・オリンピックで結果になって返ってくるから、それを信じて頑張ろう」という声をかけたくなった人もいるだろう。そのリアクションからわかる通り、努力のリターンには、「時間」というもうひとつの変数が含まれる。
つまり、努力がもたらす報酬には、「目標との距離」と「時間」という2つの変数が存在するということだ。池江選手がこだわっていたのは、パリ五輪で勝つという「目標通り」「即座」のリターンだ。
しかし、それだけでは努力の報酬を語ることはできない。リターンには「目標から外れたもの」や「時間差でやってくるもの」が含まれているはずだ。
「努力は報われるか」の答えがすれ違う原因
つまり、努力のアウトプットとしての報酬は「目標との距離」と「時間」を掛け合わせて、次の4つの類型に分けられ、それを構造的に例示すると図表2のようになる。
・池江選手が望んでいたパリ五輪で勝つという「即座の目標通りの報酬」
・インタビュアーが語っていた視聴者に勇気を与えるという「即座の目標から外れた報酬」
・この努力がやがて大会で結果につながるという「時間差で得る目標通りの報酬」
・この努力があったから、たとえば5年後にニュースキャスターに選ばれるという「時間差で得る目標から外れた報酬」
・インタビュアーが語っていた視聴者に勇気を与えるという「即座の目標から外れた報酬」
・この努力がやがて大会で結果につながるという「時間差で得る目標通りの報酬」
・この努力があったから、たとえば5年後にニュースキャスターに選ばれるという「時間差で得る目標から外れた報酬」
それを改めて整理すると、図表3のようになる。これを見れば、努力論のすれ違いの原因の一端がわかるだろう。
「努力は必ず報われる」と断言する人は、右上の「ゆっくりサプライズ型報酬」まで含めている。一方で、「努力が報われるとは限らない」という人は、「即達成型報酬」だけを報酬と見なしているのだ。