スマートフォンは年を追うごとに大型化してきた。なぜか。ITジャーナリストの西田宗千佳さんは「世界での需要や価格を考慮すると、小さいスマホは売れないからだ」という――。(第2回)

※本稿は、西田宗千佳『スマホはどこへ向かうのか?』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

重ねられたiPhone 6S PlusとiPhone 5、iPhone 12 Pro Max
写真=iStock.com/CatLane
※写真はイメージです

小さいスマホが販売されない3つの理由

スマートフォンの新製品が出るたびに「もっと小さいものが欲しい」という声が上がる。たしかに気持ちはよく分かる。

しかし実際には、小さいスマホが出てもなかなか売れない。メーカーも数年おきにラインナップに加えるのだが、結局一部でしか支持されず、長続きしないのが実情だ。売れるならどこも製品ラインナップに加えるのだが、声の大きさほど売れない……というのは事実なのである。

なぜ小さいスマホは意外と売れないのか? そこにはいくつもの理由がある。

1つ目は「小ささよりも画面の見やすさを優先する人も多い」こと。

スマホの上に表示される情報の量はどんどん増えているし、映像を見る機会も多い。そうなると、小さい画面よりは大きい画面の方がいい。手で持った時やポケットの中ではコンパクトな方がいいが、使う時は画面サイズが大きい方がいい……というジレンマの前に、「買う前に冷静になると、大きい方を選んでしまう」という人は少なくない。

「フリック入力」は世界では少数派

2つ目は「世界的に見ると片手で使うニーズはそこまで高くない」という点だ。

みなさんはスマホでどうやって文字入力をしているだろうか? 俗にいう「フリック入力」が中心ではないだろうか。

フィーチャーフォンでの文字入力から発展したもので、3×4のブロックに並んだひらがなの母音を手がかりに入力していく。五十音から発想するとわかりやすく、携帯電話のテンキーとの相性も良かったため、あたりまえのように普及している。

だが、このフリック入力、使っている国は非常に少ない。世界的に見れば、PCと同じ「QWERTY方式」とその派生形が使われることが多い。英語を含むアルファベット圏は特にそうだ。PCと同じ感覚で使えるので習熟も早い。日本でもPCに慣れた人は、スマホでもQWERTY方式を使う人が一定数いる。実は筆者もそうだ。