運動は人間としての自然な状態に戻る手段
水着の季節が始まる前にウエストを細くしたいとか、体力をつけたいとか、精神的に元気になりたいとかではなく、狩りをしたり危険を避けたりするために走っていた。そして、そういう状況では集中力が上がった方が生き延びられたのだ。
今まさにレイヨウを狩ろうとする人が地面に足を取られるわけにはいかない。だから全神経を集中させなければいけなかった。人よりも集中できれば獲物を捕まえられる可能性が高まり、生き延びられる確率も上がったのだろう。人間の脳はそうやって進化してきたからこそ、今でも身体を動かしている時に知能や集中力が最高潮になる。そして私たちも基本的にはサバンナの祖先と同じ脳を持っているから、ジョギングをすると集中力が高まるのだ。
今では動物を追ったり追われたりすることはなくなったし、地球上で新たな土地を発見する必要もない。昔のように身体を動かす理由がなくなったからこそ自分で運動をするように心がけるしかない。
ADHDの人がジョギングをする、ジムに行く、あるいは休み時間に外で遊ぶのはそういうライフスタイルが望ましいからでもあるが、そもそも人間はそのようにつくられたからでもある。ADHD傾向のある人は進化の過程で自然に運動をしてきて狩人としても優秀だったはずだ。だから運動は人間としての自然な状態に戻る手段でもあるのだ。
ドーパミンを上げる飲み物
運動によりドーパミンのレベルが上がり、気分が良くなり、集中力も向上し、モチベーションも上がる。ADHDの傾向がある人はそれに加えて世界が面白く感じられるようになる。実は運動以外にもそんな効果のあるものが日常に存在する。それがコーヒーだ。
コーヒーに含まれるカフェインが脳のドーパミンシステムを活発にするからだが、カフェインで元気になるとは知っていても、集中力が上がることまでは知らない人が多いだろう。
とはいえ無意識に気付いている人もいるかもしれない。私も学生時代、信じられないほど退屈な講義に出る時は寝ずに集中するためにコーヒーを大量に飲んだものだった。
カフェインが脳のドーパミンの活動を増やし報酬系を起動してくれるので、その時にやっていることが少しは面白く感じられるようになる。さすがに講義が突然びっくりするくらい面白くなるわけではないが、少なくとも我慢できる程度にはなった。先生が話す内容に集中できるようにはなったのだ。