研修期間中は実務より先に「資質」を見る

新年度がはじまって早くも2カ月がたとうとしています。

4月当初は、希望と不安を胸に新たな一歩を踏み出した若者たちがいる一方で、そんな彼らを受け入れる先輩たちも、いったいどんな若者なのだろうか、コミュニケーションはうまくとれるのだろうか、仕事はできるのだろうかなどと、期待と不安が入り混じった複雑な心境だったのではないでしょうか。

そして今、職場ではその期待や不安はどうなっているでしょうか。すっかり互いになじんでスムーズな滑り出しとなったところもあるでしょうし、なかなか互いの壁を越えられずにギクシャクしているところもあるかもしれません。

先輩たちはこの2カ月のあいだに、新人たちを観察してきたと思いますが、いったいどのような点に着目して観察し、評価してきたのでしょうか。もちろん、最初から期待どおりにタスクをこなせるはずなどないのですから、いきなり仕事の「出来・不出来」を評価することはないでしょう。一般的には、まず彼らに内在するコンピテンシー(資質・能力)の確認、観察評価から始められることが多いのではないでしょうか。

みんなで仲良く働くベンチャー企業のオフィス
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医師に求められる「5つのP」とは何か

当然ながら多くの組織では、入社前にこれらは一定程度、見きわめられていることでしょう。しかしじっさい組織の一員としてともに仕事を始めるにあたっては、あらためて再確認しておく必要があります。

この重要性は一般企業でも医療機関でも同じです。新人医師を受け入れた場合、できるだけ速やかにコンピテンシーの観察、把握が望まれます。なぜなら、その実情しだいでは早めの対策を講ずる必要が生じ得るからです。

私がとくに気をつけて観察するのは、Peacefulness(穏やかさ)、Politeness(礼儀正しさ)、Punctuality(時間厳守)、Priority(優先度)、Proactiveness(主体性)という5つの「P」。

医師として必要な知識や技術を有していることはもちろん重要ですが、それ以前にひとりの社会人として備えているべき、これら5つのPを欠いていたままでは、持っている知識や技術を有効活用できないばかりか、かえってこれらのスキルを使うこと自体が危険になる場合すらあり得るからです。

本稿では、医療現場で研修医を教育する者としての視点から、これらの医師にかぎらず社会人として有しているべき基本的なコンピテンシーについて私見を述べるとともに、これらに問題を抱える新人に接した場合に、いかなる方略を講ずるべきかについても考えてみたいと思います。