※本稿は、鎌田實『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生きかまた体操』(アスコム)の一部を再編集したものです。
温水洗浄便座の健康リスク
快適で便利な温水洗浄便座。でも、使いすぎには注意が必要です。
最近、ぼくが強く警鐘を鳴らしたいのが、温水洗浄便座の使いすぎによる健康トラブル。水圧を強く当てすぎると、肛門まわりを守っている皮脂膜が失われ、「温水洗浄便座症候群」と呼ばれる炎症やかゆみを引き起こしてしまうことがあります。
肛門がただれたり、もともと痔を持っている人は悪化したり、ひどい場合には肛門の感覚が鈍くなって便意を感じにくくなることもあるのです。
さらに問題なのが、温水洗浄便座を“浣腸がわり”に使ってしまう習慣。便秘気味の人がこれを繰り返すと、たしかに一時的なスッキリ感はありますが、結果的に腸が「自力で排便する力」を失い、かえって便秘を悪化させる危険性があるのです。
全身の健康を底上げする「土台」になる
そこで、便秘などのトラブルを抱えている方にこそ、ぜひ意識してほしいのが「骨盤底筋」を鍛えることです。骨盤底筋は、膀胱・直腸・子宮(女性の場合)など、内臓を支えているインナーマッスルのひとつ。この筋肉がしっかり働いていれば、便意や尿意を感じたときに、スムーズに排出することができます。
また、骨盤底筋を鍛えることは、ご高齢の方に多い頻尿や尿もれの改善にもつながります。
さらに骨盤底筋は、内臓を下から支えるだけでなく、姿勢の維持にも深く関わっています。骨盤まわりが安定すると、自然と姿勢が良くなり、腰痛予防にもつながるほか、全身の血流もスムーズに。結果として、体のすみずみまで元気がめぐり、疲れにくくなったり、冷え性の改善にも効果が期待できたり。
つまり、骨盤底筋を鍛えることは、単なる排便力アップにとどまらず、全身の健康を底上げする「土台づくり」でもあるのです。