認知症予防に効果的な運動は何か。理化学研究所ロボット工学博士で認知症予防研究者の大武美保子さんは「広い世代におすすめなのはウォーキングだが、認知症予防を想定した場合には骨への負荷が足りない。骨密度を維持するための運動を選んでほしい」という――。

※本稿は、大武美保子『脳が長持ちする会話』(ウェッジ)の一部を再編集したものです。

公園で運動する女性
写真=iStock.com/west
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広い世代におすすめなのはウォーキングだけど…

適度な運動習慣は、健康維持のためだけでなく、脳を長持ちさせるためにも欠かせない要素です。適度な運動により、代謝が促され、脳を含む全身の細胞の老廃物を身体の外に排出できます。無理なく続けられ、広い世代におすすめできるのがウォーキング。道具いらずで、すぐ実践できるのが、なんと言っても魅力です。

ただ、認知症予防を想定した場合、ウォーキングだけでは不十分なところがあります。それは、骨への負荷が足りず、骨密度を維持しづらい点です。

骨密度の低下は認知症の直接の原因になるわけではありませんが、骨粗しょう症になって骨がもろくなると骨折しやすくなります。高齢者が骨折すると外出への意欲が一気に減少し、行動範囲が狭まります。運動ができなくなり、場合によっては歩くことにも支障が出ます。その結果、人との交流が減り、認知機能を活用する機会も少なくなって、認知症を発症しやすくなるというわけです。

骨密度を保つためのポイントは「骨への衝撃」

骨密度を保つための運動の重要なポイントは、骨への衝撃があること。おすすめは縄跳びです。以前、息子たちと公園へ行ったとき、砂遊びに夢中な二人を見守りながら手持ち無沙汰だったので、「エア縄跳び」をしてみました。跳び縄を持っていなかったので、縄を回す体でぴょんぴょんしてみたのです。

エアとはいえ縄跳びですから、全身の骨にしっかり衝撃が行き渡ります。リアル縄跳びではできないかもしれない二重跳びやあや跳びも自在で、達成感さえあります。

周囲への配慮は必要ですが、思い立ったらすぐでき、一階であれば室内でも可能です。ちなみに、縄がなくて持ち手だけがついていて、それを握って跳ぶと、跳んだ回数を計測できる「エア縄跳び」も販売しているようです。

爪先立って両足のかかとを床にストンと落とす「かかと落とし」は、骨粗しょう症予防としてよく知られています。横断歩道での信号待ちなど、待ち時間の運動に取り入れられます。ソファでゴロゴロする時間が多い人は、立っている時間を増やすだけで骨に負荷を与えられ、筋力を維持できると言います。スクワットも足腰を強くします。家やオフィスですぐできることを一つ持っておくと、継続しやすくなるでしょう。