主要国の中で断然高いインフレ率の日本。この傾向は今後も続くと見られている。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「1~3月の実質GDPがマイナス0.2%で、4~6月もマイナスになる可能性が高く、スタグフレーションに陥る恐れもある。鍵は、給与がどれだけ上がるかだが、4月の賃金上昇率はインフレ率を下回っている」という――。
繫華街で停車中のタクシーの列
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景気が減速感を強める中、インフレだけがしつこく残り、このままではインフレ下の景気後退であるスタグフレーションに陥るのではないかと心配しています。

日本のインフレ率は、いまでは主要国の中では断然と言っていいくらい高く、今後もインフレが続くと考えられます。こうした中、賃上げでの給与増だけが数少ない期待ですが、実際にインフレに勝てるほど給与が増えるのかは今のところ不明です。

4四半期ぶりのGDPマイナスと今後の懸念

1~3月の実質GDPが年率でマイナス0.2%と発表され4四半期ぶりのマイナス成長となりました。マイナス幅もわずかですし、1四半期程度のマイナスだとそれほど心配することはないのですが、今後さらに急速に景気が失速する懸念があります。

【図表】街角景気

図表1は、「街角景気」といって、経済の最前線にいて景気に敏感な人たちに対して行われている調査です。調査対象は、タクシーの運転手、小売店の販売員、ホテルのフロントマン、中小企業経営者、変わったところではハローワークの受付の人たちです。彼らに内閣府が毎月調査を行っています。この調査では、数字が「50」を超えていると景気が良くなっていると感じている人の割合が多く、「50」を切ると景気は悪化していると感じている人が多いのです。

この数字が、かなり弱含んでいます。年初には「50」を切っているものの「48.6」だったのが、2月、3月と「45台」まで落ち、それが4月には「42.6」まで下落しました。表には、2024年1月からの数字を載せてありますが、ここにきて「急落」と言っていい落ち方です。5月には少し戻しましたが、低迷している状況です。経済の最前線で景気と向き合っている人たちの景況感が大きく落ちているということです。

先ほど、1~3月の実質GDPがマイナス0.2%と説明しましたが、このままでは4~6月のGDPもマイナスになる確率は低くなく、2四半期連続のマイナスとなる可能性があります。2四半期連続のマイナスとなると、機械的には景気後退と判断されます。