「トランプ関税」により世界の金融市場は大きく揺れている。住宅ローン金利に影響を及ぼす日銀の金融政策はどんな影響を受けるのか。ファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんは「あるデータをチェックすると、政策金利の最終的な到達点が見えてくる」という――。
日銀通り
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銀行間の“低金利競争”はいったん休戦へ

まず、足元の変動金利型住宅ローンの状況について確認をしておきたい。

この4月から、変動金利の水準が軒並み上昇した。日銀の政策金利の引上げは1月だったが、2~3月は住宅ローンの需要が高まる“繁忙期”にあたり、新規貸出分の変動金利を据え置いた銀行が多かった。住宅ローン顧客の獲得競争が激化し、変動金利を上げたくても上げられない、という状況が3月末まで続いていたのだ。

この銀行間の“我慢比べ”ともいえる、変動金利の低金利競争をリードしていたのは三菱UFJ銀行だ。日銀は、昨年3月にマイナス金利解除を決めて以降、政策金利を2回、合計0.4%ほど引き上げたが、三菱UFJ銀行は変動金利のベースとなる基準金利こそ引き上げたものの、優遇金利を拡大して実際の適用金利を据え置いた。その結果、これまで金利面で優位にあったネット銀行勢よりも、低い金利を提供することとなった。

その三菱UFJ銀行も、さすがに4月からは基準金利を0.25%引き上げて、優遇金利は変えなかったことから、新規貸出の適用金利も0.25%引き上げて0.595%とした。これにより、他行も追随して0.25%程度引き上げることになった。ごく一部の銀行は据え置きを続けているが、日銀の次の利上げまでは、いったん低金利競争は休戦状態に入ったといえよう。

日銀の利上げでも変動金利はまだまだ“超低金利”

一方、日銀のマイナス金利解除以前に変動金利で借りた人は、度重なる利上げによって、その都度借入金利は上昇している。現在、政策金利は0.5%であることから、0.4~0.5%程度は上昇しているはずだ。

ただ、この程度の上昇幅であれば、まだまだ住宅ローンとしては“超低金利”の部類に入る。頭金がほとんどないフルローンに近いものではない限り、ローンの返済計画に大幅な狂いは発生していないと思われる。過度に悲観する必要はまったくない。

例えば、5000万円を期間35年・金利0.4%で借りていた人が0.8%に上がった場合、毎月の返済額の増額分は9000円ほどだ。「5年ルール」を採用している住宅ローンであれば、目先5年間は毎月返済額に変化がないので、家計の見直しなど、利息の増加分への対策をする時間は十分ある。