人を動かす人はどんな話し方をしているか。心理セラピストの杉田隆史さんは「日常的な『スモール・トーク』は当たりさわりがないようでいて、実は人間関係に影響する。たとえば『暑いですね』と言われて妙にマジメに答えると、『共感』が成り立たず軽く相手を拒絶しているようになってしまう」という――。
※本稿は、杉田隆史『「なんだか生きづらい」がスーッとなくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「正論」を言えば言うほど人は動かない
昔、私がある会社で一緒に働いた人で、いい意味で正義感が強いというか、悪い意味でガマンできない人がいました。仮にBさんとしましょうか。
そのBさん、「あの人は仕事ができないからなんとかしてほしい」とか、「私情をはさんだ人事はおかしい」とか、問題に気がつくと、すぐに直接トップの人に話しに行くんです。
そのBさんの言い分を聞いてみると、たしかに全部正しいことばかりなんです。
ところが、Bさんはそういった正論を言っているにもかかわらず、言い分は通らないばかりか、かえってまわりの状況が悪くなって、トラブルが絶えないんですね。
そしてついにはBさん、会社にいづらくなったのか、辞めてしまいました。
そんなBさんの姿を見て私が思ったのは、こんなことなんです。
「正論は人を動かさない」
おそらくBさんの今までの人生は、「私は正しいことを言っているのに、まわりがいけないんだ」と憤ることの連続だったのではないだろうかと……。
正論というのは、自分が相手より少しでも正しいと思うと、つい言ってしまいがちだし、それが相手に聞き入れられないと、「私は正しいことを言っているのに、わからない相手がいけないんだ!」ということになって、そこで「話が終わってしまう」んですよね。あとは、自分の問題ではなく、相手の問題なんだと。
でも、たしかに正論は、まさに正しいんですけど、言えば言うほどよけい「人を動かさない」、ということもあると思います。正しいことばかり言う学級委員はなぜか人望がなかったりするのも、そういうことなんだと。