なかなか身支度をしてくれない子どもにはどのような声がけがよいのか。シュタイナーこども園の園長を務める赤川幸子さんは「子どもにとってわかりやすい“サイン”や“唱え言葉”を決めておくとよい。ルーティンを体で覚え、自然と動いてくれるようになる」という――。

※本稿は、赤川幸子『「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「片付けなさい!」と怒鳴っても改善しない

出かけようと思ってせっかく片付けたのに、気がつくとまたおもちゃを出して遊んでいる。そんなことはよくあるものです。

こんな時、何度「片付けなさい!」と怒鳴っても、状況は一向に改善しないはずです。

そういったことを防ぐために、「サイン」を決めておくことをおすすめします。ポイントは、そのサインが子どもにとってわかりやすいことです。

例えば、園ではおもちゃの棚には、一枚布がかけてあります。布がかかっている間は「おもちゃは今、寝ている時間だから出せない」というルールになっています。室内遊びが終わり、棚におもちゃを片付け後、そこに布がかかると、子どもたちは「おもちゃは寝てしまった」と思います。

そのため、わざわざその布を開けてまで、出そうとはしないのです。

ただの布なので、開けようと思えば自由に開けることはできるのですが、「布がかかっている=使えない」とわかっているのですね。

このように、目に見えるわかりやすいサインを決めておくだけで、同じことが繰り返されるのを防ぐことができます。

いつまでも片付かない、ということがないわけです。布をかけるというのは、「これでおしまい」というサイン。

このように見てわかりやすいサインがあると、子どもは納得しやすいものです。

リネンのシートから作られたプロジェクションスクリーン
写真=iStock.com/the-lightwriter
※写真はイメージです

布で環境を整える

布は結構有効なので、テレビにかけてもいいでしょう。布がかかっている間は、テレビは動かないと思ってくれます。また、黒くて四角いテレビにきれいな布をかけることで、空間の印象も柔らかくなります。手を出してほしくないものの上に布をかけておいて、「大事なところだから、触らないでね」と伝えておけば、子どもは触らないものです。

家を見回して、どこにどんなサインを埋め込むことができるかを、考えてみるといいでしょう。毎日注意していることを、子どもが見てわかるサインに置き換えることはできないでしょうか。

子どもが理解しやすい環境を整えることができると、ずいぶんと言葉での注意が減っていくはずです。

扉にも意味を持たせています。閉まってるときは、開けてはいけない。

閉めておかなきゃいけない理由があるから閉まっている、ということを暗黙のうちに伝えています。

もちろん鍵がかかっているわけではないので、開けようと思えば開くのですが、そうはしません。開けたいときには、ちゃんと確認しに来ます。勝手に開けて、移動することはありません。