いい人材を採用するためにはどんな採用方法を選ぶべきか。経営層のヘッドハンティングに従事してきたグロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクターの小野壮彦さんは「リファラルほど強力な採用は他にない。急成長企業には、リファラル採用をうまく活用している企業が目立つ」という――。

※本稿は、小野壮彦『世界標準の採用』(日経BP)の一部を再編集したものです。

握手をかわすビジネスマン
写真=iStock.com/SunnyVMD
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失敗している企業は「手間のかけ方」が足りない

リファラルほど強力な採用手法は他にありません。

従業員から知人の紹介を受けるリファラル採用は、自社に合う優秀な人材が見つかる可能性が高く、採用コストも抑えられます。そのため、導入する企業は日本でも数多く、今やメジャーな採用手法の一つといえるでしょう。

実際、急成長企業には、リファラル採用をうまく活用している企業が目立ちます。

一方で、やってはいるものの、全然うまくいかない企業がたくさんあるのも事実です。

その差はどこで生まれるのでしょうか?

まず、リファラル採用をうまく機能させられていない企業では、従業員にただ「誰かいい人いない?」と声をかけるだけで終わってしまっていることが多いようです。

問題は、手間のかけ方が足りないことです。しかし、つい「紹介が少ないのは、従業員が会社に対していい印象を持っていないから」という誤解や言い訳をしてしまいがちです。

また、リファラル採用の活性化策として、紹介者に支払う報奨金を引き上げようとする動きもよくあります。しかし残念ながら、金銭的な報酬で解決しようとするアプローチには限界があります。

では、成功するリファラル採用を実現するためには何が必要なのでしょう?

「メモリーパレス」のアプローチ

ここでご紹介したいのが、米国のベンチャーキャピタル大手、セコイアキャピタルが提唱する「メモリーパレス」のアプローチです(※)

※セコイアキャピタルのサイト内の記事「3X Your Referral Rates」を参照

さすが泣く子も黙るセコイアさんともなると、ネーミングまで知的ですね。「メモリーパレス=記憶の宮殿」という名前の由来は、古代ローマの哲学者キケロが使った「場所法(the Method of Loci)」という記憶術だそうです。詩を覚えるため、キケロは、詩の各節を自分の家にある様々なものと結びつけ、脳内で部屋から部屋へと散歩することで記憶を呼び起こし、詩を暗唱した、という故事からきているとのことでした。

この手法は、一時日本のスタートアップ界隈で話題となり、活発に活用されはじめています。どんな企業でも簡単に実践できる手法なのでご紹介します。