彼らの本分はステージでの“芸事”にある

活動休止中だった嵐が再始動し、そしてツアー後に活動を終了することが発表された。なぜ、嵐はツアーをもっての終結という形を選んだのだろうか?

メディアやSNSでは「ファン思い」の行動と受け止められている。もちろんその通りなのだが、それだけではない。嵐の歴史を踏まえると、そこに、彼らが“テレビタレント”ではなく“ジャニーズ事務所のアーティスト”として生を終えようという誇りと覚悟を感じるのである。

拙著『夢物語は終わらない 影と光の“ジャニーズ”論』(文藝春秋)で詳述したが、そもそもジャニーズ事務所から生まれたタレントたちは “テレビタレント”ではなく“アーティスト”である。もともと、テレビに出るタレントを量産しようとして作られた事務所ではなく、ステージに立つスターを生み出そうとしたことが事務所の原点にある。コンサートを大事にし、多くのオリジナルのミュージカルを上演しているのもその延長線上にある。テレビ番組やCMなどの“芸能界”に生きるのではなく、ステージで“芸事”を追究していく。それが、彼らの本分なのである。

明るいステージライトの前で、手を挙げた人々、コンサートのシルエット
写真=iStock.com/9parusnikov
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松本主演の『花より男子』で大ブレイク

だが、SMAP以降、彼らは“テレビ売れ”をするようになっていく。

アイドルがゴールデン・プライムタイムにバラエティー番組を持っても成功するはずがないと考えられていた時代に誕生した「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)は高視聴率を獲得し続けるお化け番組となり、91年のSMAP以降にデビューしたTOKIO・V6・KinKi Kidsは早い段階でバラエティーの冠番組を持つことで、お茶の間での知名度を高めていった。

2000年代以降は、グループの数も多くなり、すべてのグループがいきなり冠番組を持つわけではなくなっていったが、1999年にデビューした嵐は、SMAP以降の90年代のこの“テレビ売れ”の流れにギリギリのっていたと言っていいだろう。

嵐のメンバーは自分たちのブレイクを松本潤主演のドラマ『花より男子』(TBS系)がきっかけだったとしており、“テレビでブレイク”したことは紛れもない事実である。

実は活動の初期は都内1館だけで公開されるインディーズ映画を作ったり、東京グローブ座ではメンバー主演の小規模な舞台も行ったりするなど、必ずしもテレビというメジャーでの活動がメインではなかった。大野智主演の演劇もシリーズ化されるなどの動きもしていた嵐だったが、ブレイク後は演劇とは距離が離れ、テレビの仕事が激増していく。