月経のトラブルに悩まされる女性は少なくない。ナビタスクリニック川崎副院長の小林千春さんは「月経のトラブルは、生活の質やメンタルにも影響を与える“医療が必要な状態”。自分の体を大切にできる選択肢として、低用量ピルのことを知ってほしい」という――。
生理痛に苦しむ女の子
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10代後半から20代前半は不調が起こりやすい時期

「ピル」と聞くと、「避妊薬」というイメージを持つ方が多いかもしれません。実際、低用量ピルはその働きから避妊目的でも使われていますが、それだけではありません。特に、10代後半から20代前半の思春期は、ホルモンバランスの変化が大きく、月経不順や生理痛、PMS(月経前症候群)といった不調が起こりやすい時期です。こうした不調は、学校生活や受験、就活、スポーツの大会など大事なイベントに大きな影響を与えることもあります。

実際に、働く女性の月経関連症状による経済損失は1年あたり6828億円という試算があります。そのうち75%(4911億円)はプレゼンティーズムといって、出勤はするものの効率が低下するために生じる労働損失によるものです。PMSや月経痛により仕事のパフォーマンスが半分以下になる人は44%いるものの、月経異常に対して何もせずに働く女性が多い(44%)と報告されています。低用量ピルへの潜在的な需要は大きいのです。また、試験や大会などでのパフォーマンスへの影響も考えれば、ホルモンバランスを調整できることは女性が社会で今よりもっと活躍することにもつながります。

そんなときに、「体のリズムを整える手助け」として使えるのが、低用量ピルです。

日本では普及が遅れていた

実は、欧米では10代の若者が医師の指導のもとで低用量ピルを使って体調管理をすることはごく普通のことですが、日本では低用量ピルへの理解が進まず、普及が遅れていました。例えば世界保健機関(WHO)が公表している避妊方法としての低用量ピルの服用率は先進国29カ国で22.4%ですが、日本は2015年時点で0.9%でした。1999年にようやく日本でも低用量ピルの使用が認可され、2015年からオンライン診療が始まったことで近年少しずつ服用率が上昇しており、低用量ピルの出荷量に基づく推定では6.1%ほどの女性が服用しているとされています(ネクイノの調査)。

本稿では低用量ピルの正しい知識や、どんな場面で使えるのか、どこで相談すればよいのかといったポイントを、わかりやすくお伝えします。