憲法違反の疑いが残る「養子縁組プラン」
また別に、80年近くも前に皇族の身分を離れたいわゆる旧宮家系の子孫男性に対して、養子縁組で皇族の身分を与えるプランも、検討されている。
しかし、皇族の養子縁組は皇室典範によって禁止されている(第9条)。にもかかわらず、国民の中から特定の家柄・血筋=門地の者だけに例外的・特権的に養子縁組を認めて、結婚を介さないで皇族の身分を取得できるようにする。そんな方策だ。
このような制度は「国民平等」の原則に反し、憲法が禁じる「門地による差別」(第14条第1項)にあたる疑いが、権威ある憲法学者である宍戸常寿・東京大学大学院教授によって、すでに指摘されている。そうした指摘を受けて、衆議院での立法実務をサポートする衆議院法制局も、憲法違反の疑いが否定できないことを明言している(3月10日、第5回全体会議)。これらの事実は重大だ。
しかも、養子縁組に同意する当事者が実際にいるのかどうかも不明だし、奇妙なことに政府はこれまで、当事者の意思確認はしないと主張している。
欠陥の放置が招く、悠仁さまへの「非人道的な要請」
どうして、すべての党派が集まる全体会議でこのような見当外れの議論をしているか。理由は簡単だ。
政府・自民党などが、今の欠陥ルールによって規定された、敬宮殿下を外して秋篠宮殿下から悠仁殿下へと皇位が継承される流れを、「ゆるがせにしてはならない」という考え方に凝り固まっているからにほかならない。
一夫一婦制で少子化なのに「男系男子」限定というミスマッチな構造的欠陥を放置して、しかも皇室の存続を望めばどうなるか。
たとえば悠仁殿下に対して、次のような非人道的な要請が平然と突きつけられることになる。
「皇室においては、お世継ぎづくりが最優先です。……いっそ学校など行かずにいち早くご結婚いただくことが何よりに優先事項ではないでしょうか。……
『悠仁親王殿下は留学されると良い』と言う人は、わかっていないか偽善者だと私は断じます。……
今の状況で悠仁親王殿下に何かあれば、誰がどのように責任を取るのでしょうか」(倉山満氏『決定版 皇室論』ワニブックス)
『悠仁親王殿下は留学されると良い』と言う人は、わかっていないか偽善者だと私は断じます。……
今の状況で悠仁親王殿下に何かあれば、誰がどのように責任を取るのでしょうか」(倉山満氏『決定版 皇室論』ワニブックス)