レクサスのリース代のほうがよっぽど無駄

同じような話は、筆者もこれまでたびたび聞いてきた。

システム導入を提案したところ、費用対効果が出るかどうか、検証しろと命じられた
そこでシステム導入によって生じる生産性向上効果を、事務員の人件費(工数削減時間)と比較したコスト削減効果として提示した
ところが会社からは、「事務員たちの給料はもともと発生しているものだから費用対効果算出の比較対象にならない」と突っぱねられた

余談だが、この話をしてくれた従業員30人ほどの運送会社の部長は、「社長からは、『お前は金の無駄遣いが好きだなぁ』と嫌味を言われましたが、社長が乗っているレクサスのリース料金は、システム月額利用料金の3倍するんですよ。どっちが無駄遣いなんだか……」と憤っていた。

既存の支出には甘いが、新たな投資には厳しく接する。ある種の現状維持バイアスなのだろうが、加えてこの社長においては、経営に関わることについて、年下の部下から口出しをされたくないという心理も働いたのかもしれない。

改善を妨げる老害ドライバーの存在

DXを推し進める上で障害となるのは、何も経営陣ばかりではない。

ある中小運送会社の社長は、「50代・60代のトラックドライバーが、当社のデジタル化を妨げている」とため息をつく。

この会社では、トラックドライバーが手書きで書いていた運転日報を、トラックに搭載しているデジタルタコグラフ(デジタコ)から出力できるようにシステム投資を行った。

運転日報は毎日作成することが義務付けられている。

それゆえに、社長としては「毎日仕事を終えて、帰社してから手書きで日報を書くのも大変だろう」という親心もあってのシステム投資だった。

だが、デジタコから運転日報を出力するためには、貨物の積み卸しをするたびにドライバー自身がデジタコを操作する必要がある。操作といっても、「これから荷物を積みます」「荷物を積み終わりました」といった仕事の切れ目を記録するためのステイタスボタンを押下するだけなのだが、一部の50~60代のドライバーが「面倒くさい」と反発してきたのだ。