※本稿は、電通 未来事業創研『未来思考コンセプト ポストSDGsのビジョンを描く』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
くらしが良くなる展望が見えない
未来事業創研ファウンダーの吉田健太郎と申します。少しだけ未来事業創研設立の背景についてお話しさせてください。まだコロナが拡がる前の2019年のある日、当時中学2年生だった長男が「俺、昭和に生まれたかったわ」と言ってきたのです。その理由を聞くと「だって昭和の方が楽しそうじゃん」と。
現代は教育課程でもメディア報道でも、世界における温暖化、食糧不足、格差に関することや、日本国内における消滅都市問題、少子高齢化、労働力不足など、現代から未来に向けた課題ばかりを見せられています。未来は今より良くなるといった情報が少なく、どう悪くしないかという課題を押し付けられているように感じるというのです。
その一方、昭和は自由で、もっと楽しく、もっと便利にというエネルギーが世の中のワクワクと勢いをつくっていたように感じたのでしょう。これはその通りだと思いました。私が子どもだった昭和50年代、家庭でも学校でも、地球の未来に向けた課題解決を強要された記憶はほとんどなく、世の中は勝手に進化して、時間が経つともっとくらしの快適性が増すと思い込んでいましたから。
中高生の6割以上が「10年後に不安」
2025年のいま、人々は未来への期待よりも、未来に向けた課題に囲まれています。とくに日本では若年層になるほどその感覚は強くなっています。ソニー生命の調査では日本の中高生の6割以上が10年後の日本・世界に不安と回答しています。
対象となる中高生が生きてきた期間に大規模な震災が起きたことや、その被害の実態などをインターネットで得ることができることもあるので、楽観的に捉えることができない状況であることは確かです。さらに世界に目を向けると戦争も複数発生していて、世界がより良い方向に向かっているという空気は感じにくいことも頷けます。