※本稿は、高濱正伸『13歳のキミへ 中学生生活に自信がつくヒント35』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
生まれて初めて、自殺しようと思った
いじめの話。
キミの年代、小学校5年から中学2年くらいにかけては、ちょうどいじめがいっぱいある頃だ。いちばん厳しい時期だと思うんだよね。現に、いじめをしている人もいるかもしれないし、いじめられている人もいるかもしれない。
ここで言いたいのは、「いじめられた体験は財産になる」ということ。逆説じゃなく、いじめをくぐり抜けた人ほど強い人はいないからなんだ。
ぼく自身がいじめられたことを話そう。
自分の身体のことで悩んでいた。頭が、大きいんだよ。3歳くらいのときに宮崎の浜辺で撮った写真を見ると、「うそか!」と思うくらい大きい。サイズの合う赤白帽がなくて、県庁所在地の熊本市に問い合わせても見つからない。東京に問い合わせても「ありません」って言われた。「あんたの赤白帽は、日本にはなかよ」って母親に言われてね。小さすぎて入らない赤白帽をゴムで一応留めるんだけど、なんかただちょこんと乗っけてるようにしか見えなくて。だから、頭はコンプレックスだった。
コンプレックスって、その人にしかわからないんだよね。
たとえば、髪が天然パーマでクルクルの人はそのことを気にしてて、周りから見たらかわいいだけなんだけれど、「そのことについては何も触れないで!」って思う。ただメガネをかけてるだけでも、それについて言われるのが嫌だっていう人はいっぱいいる。
思えば、ぼくの頭が大きいことも、周りからすると結構かわいいものだろうし、おもしろいものだろうけど、ぼく自身は「やめて‼」って思ってた。
4年生まではなんともなかったけど、5年生になってから、とうとういじめが来たんだ。
朝、ぼくが学校にやって来ると、伝令係みたいな子が「来ました!」ってクラスじゅうに伝えるわけ。そうすると、みんながザーッていっせいに立ち上がって、教室へ入ってきたぼくに向かって「でこっぱち! でこっぱち!」って手をたたいて、合唱を始めるんだ。
彼らからすれば、単に喜びや遊びでやっているだけなんだけど、こっちは「やっぱりおれは奇形だったんだ……」と死ぬ思いさ。しかも、初恋の女の子まで「でこっぱち、でこっぱち」ってやってるんだからね。
そのときの気持ちっていったら、もうクラスじゅう真っ暗。真昼の暗黒みたい。誰も友達がいない。生まれて初めて、自殺しようと思った。